【重賞レース回顧】第66回大阪杯(GI)2強轟沈!ポタジェの安定感が波乱を呼ぶ

重賞レース回顧

写真:JRA

  • 1着金子真人HD
  • 2着キャロットファーム
  • 3着シルクレーシング

上位入線馬の馬主名だけ見ると当たり障りの無い定番結着のようだが実際はそうではなかった。

2022年4月3日㈰、阪神競馬場で行われた第66回大阪杯(G1)は、先行集団を見る形で進んだ吉田隼人騎乗の8番人気ポタジェ(牡5、栗東・友道康夫厩舎)が直線先に抜け出した3番人気のレイパパレを交わし、後方から猛追した7番人気アリーヴォを抑えて優勝。良馬場の勝ちタイムは1:58.4秒。

2018年のセレクトセール(1歳)で2億520万円で競り落とされた良血馬ポタジェは初重賞制覇をこの大舞台で飾る。意外な事にオーナーである金子真人HDも大阪杯はG1昇格以前を含めても初制覇だった。

 

大阪杯

戦前

昨年のJRA年度代表馬であり現役世界最強馬のエフフォーリア(単勝1.5倍)と芝2000m5連勝中の超速逃げ馬ジャックドール(同3.7倍)による2強対決の構図。

3番人気の昨年の覇者レイパパレは単勝9.2倍と少し離され、4番人気のアカイイトは同20.4倍というオッズからも、「勝つのは2強のどちらか」という下馬評。私自身もアクシデント以外でエフフォーリアが負ける事はまず無いと考えていた。

 

ゲートイン

スターターが旗を振る前にG1ファンファーレがフライング気味に鳴り響く。思い返すと既に波乱の予兆はここで出ていたのだが、脳内をエンドルフィンで満たされた我々は気にも留めず、大阪音楽大学の皆様による素敵な演奏を大興奮で堪能する。

そして16頭が続々とゲートイン。ここで断然人気のエフフォーリアは人目に触れぬようゲートに突進して顔を腫らす。秋華賞でソダシが歯を折ったパターンに酷似しているが、無論この時点では誰もそれを知る由もない。

スタート

キングオブコージが少々遅れる。外からアフリカンゴールドとレイパパレが勢いを付けていくが、スピードの違いでやはりジャックドールがハナへ。案外あっさり隊列は決まり、2番手アフリカンゴールド、3番手ウインマリリン、川田レイパパレは我慢の4番手。

道中

1000m通過は58.8。当日施行の2勝クラス(2000m)の勝ちタイムが1:59.2。3勝クラス(1400m)が1:20.3だったことを踏まえれば平均ペースか、ジャックドールの速力からすればむしろゆったりした流れ。エフフォーリアは先頭から10馬身ほど離れた中団やや後方を進む。

そして3~4コーナー中間から2番手との差を少し開きつつジャックドールは直線に向かう。ここでいつもなら馬なりで先頭を射程圏に入れているはずのエフフォーリアは武史のアクションに全く応えず、まだ中団で藻掻いている。

直線

手応えから見てもエフフォーリアが消える事は早々と確定した。もう1頭の主役ジャックドールは絶妙のタイミングでレイパパレに馬体を併せられ、残り200mで交わされる。

「今年も2強を沈めてレイパパレか!?」

誰もが一瞬はそう思ったところにポタジェ、アリーヴォ、ヒシイグアスが勢いよく襲い掛かってくる。至高の2強対決がいつのまにやら逃げ惑うお姉さんを追いかける3人の荒くれという構図に変わった。

ゴール

前年覇者レイパパレを残り30m地点で捕らえたポタジェが先頭でゴール。猛追したアリーヴォはレイパパレにハナ差届かず3着。

人気両頭はジャックドールが辛うじて掲示板を確保(5着)したものの、エフフォーリアは終始見せ場すら作れず9着と惨敗した。

人気馬の敗因

5着④ジャックドール・・ジャックドールの不安材料6点および落鉄。

9着⑥エフフォーリア・・仕上げがせいぜい8割程度との事で他を舐め過ぎ。および初の関西遠征、ゲートでの怪我など。いずれにせよ今回は全能力の5%も発揮していないことが敗因。

まとめ

ポタジェ

僅か半年間で「超安定株」から「押さえないと不安だけど来ない馬」へとイメージダウンしてしまったが地力は確かなものを持っている。

秋天は上位3頭が異次元。AJCCと金鯱賞は良く追い込むも少しだけ馬券内に届かなかったに過ぎず、走りが不安定になったワケではない。そもそも自分の力はキッチリ出すというキャラなので展開が暴れるようなレースは向く。

ジャックドールを巡る争いが激化するようなら、飛び込んでくるのは最後方組ではなくこちらかも知れない。結末を迎えてから「結局金子さんか(;´・ω・)」と嘆くのがイヤならば買っておくべきだろう。

レイパパレ

金鯱賞(G2)は想像通りの内容での2着。逃げにこだわらないレース振りは確かな成長を感じさせ、直線入り口で彼女の勝利が脳裏を過ったファンも少なくなかっただろう。そして川田自身も本番ではどの辺りで捕まえに行かねばならないかという感触は掴めたはず。

今年の下馬評も昨年同様断然の2強気配だが、その昨年は2強共に連対すら出来ず、単勝12.2倍の本馬が4馬身差で戴冠した事を忘れてはならない。

アリーヴォ

小倉大賞典(G3)で重賞初制覇を飾ったが、外差しの決まる馬場と枠に恵まれたとの意見も多く、まだ高い評価は得られていないのが現状。

とはいえ10戦(5.1.2.2)の成績はまだ底を見せておらず、4歳という年齢からも伸びしろは十分にある。ほぼ外差しにシフトする今週の馬場もマッチするだろうし、鞍上ルメールも心強い(武豊に変更)。また、水曜追切では坂路4F51.3-12.4と上々の時計を出しており体調面でも不安はなさそうだ。

父ドゥラメンテ産駒による初G1制覇はタイトルホルダーに先を越されたが、同じ阪神で一気にG1タイトルまでアリーヴォしても不思議はない。

上記が大阪杯:展望に記した内容。競馬には100%来る馬もいなければ100%来ない馬もまたいない。今回のエフフォーリアの単勝1.5倍は支持率で言えば53%くらいなので、そこまで信頼されていなかったと考えれば、むしろ普通の波乱レースの一つとして見ても良いのではなかろうか。1倍台の馬が馬券外に飛ぶ事など実際に日常茶飯事で、たまたま今回はそれが世界最強馬だっただけの話だ。

ポタジェの最大の長所は愚直なまでに自身の能力をきっちり出せること。様々な要因があったのだろうが人気馬が凡走した事は紛れもない事実であり、その中でもブレずに全能力を発揮し、且つ前年覇者を従えての戴冠は見事だったと言えよう。

ややもすると同馬主のラブリーデイの蹄跡を辿り、この後一気に古馬戦線の勢力図を書き換えてしまうかも知れない。

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