【第82回菊花賞(G1):回顧】DNAに刻まれた圧逃の記憶。

重賞レース回顧

10/24㈰、阪神競馬場で行われた第82回菊花賞(G1)はタイトルホルダー(牡3、美浦・栗田徹厩舎)が3:04.6秒(良)で優勝。横山武史騎手は菊花賞初制覇となった。

勝ち馬の5馬身後方で繰り広げられた熾烈な2着争いはオーソクレースが紅一点のディヴァインラヴをアタマ差退けた。春の2冠で共に3着だったステラヴェローチェは追い込み届かずハナ差の4着。

 

 

 

 

第82回菊花賞(G1)

枠順による明暗

枠順発表では有力馬達が綺麗に内と外に分かれ、内が有利、外が有利の議論もSNS上で飛び交った。内有利なのはコース形状を見れば一目瞭然だが、多様な意見があって面白い。

圧倒的に有利なのは自在性のある②アサマノイタズラと③タイトルホルダー。

逆に⑭~⑱に入った重賞ウィナー達には苦難の枠となる。

 

 

 

 

 

レース展開

スタートから手綱をしごいてタイトルホルダーが飛び出した。番手でのんびりしていて直線ドン詰まり惨敗の前走を思えばその作戦も頷ける。

1000m通過は60秒ジャスト。3000mの菊花賞では明らかに速く、タイトルホルダーは終わったと私は思った。

もちろんこのペースだと他も追いかけず、2番手は兄貴の和生だから無理に競りかけることもない。ほどなくしてセファーラジエル鮫島克駿だけが異変に気付いて動く。

「残り1000を切りました」

小塚さんの声と同時に時計に目をやると「2:06」の表示。マジで??

横山兄弟のコンビプレー

ラップタイム表の通り、タイトルホルダーは敢えて競りかけられないペースで最初の700~800mまで行き、その後は2000m過ぎまで歩くようなペースに落としている。

私がそう思ったように、1000m通過時点で大半の騎手はタイトルホルダーは止まると予測を立てたのであろう。

ところが、その間に武史がペースを著しく落としても2番手以下が差を詰めようとしない。もう一度言うが、2番手に付けるのは兄貴の和生だ。

武史と和生の阿吽の呼吸によって中間の1000m以上をタイトルホルダーは歩いて通過することに成功。800m~2200mの部分だけ切り取ると、なんと1400mに1:30.6秒を費やしている。

この時、ルメールとミルコはやられた感満載で手綱をしごき始めているが、他の騎手はほぼ無挙動だ。福永はボチボチ前目にいる。

直線

自身には十分な余力、後続勢には絶望的な差を付けたままタイトルホルダーは直線を迎える。

道中で一服する余裕を与えられ、画面の左で独走態勢に入った皐月賞2着馬を遥か後方から捕らえるのは彼の父ドゥラメンテであっても難易度S級のミッション。

タイトルホルダーは見事に3000mを逃げ切り、父が無念の涙を呑んだ最後の一冠を掴み取った。

 

引用:JRAホームページより

傾向と結果

  • 阪神3000mは外枠不利。

→2枠③番が勝利、2着に8枠⑱番。

  • 過去10年1番人気(6.0.2.2/10)

→距離適性無く13着。

  • 過去10年関東馬(1.0.2.49/52)
  • 圧倒的に関西馬優勢。

→関東馬のワンツー。

  • 過去10年関西馬(9.10.8.101/128)

→3着が最高成績。

  • 好走率の高い馬体重は480~500㎏。

上位はそれぞれ464、474、484㎏。

  • 強い馬が勝つ。

5馬身差の圧勝。

 

他にも牝馬は苦戦など色々あったが悉く破壊された。データや傾向は馬券戦略上、非常に有効ではあるが、あまりに先入観を持ち過ぎると大抵痛い目を見る。

まとめ

勝ったタイトルホルダーはこれで8戦3勝(3.2.0.3/8)となり、G1は初勝利。

父であるドゥラメンテの引退レースとなった宝塚記念(G1)勝ち馬マリアライトの仔であるオーソクレースを下し、ドゥラメンテ自身が舞台に立てなかった菊花賞のタイトルを産駒初G1という形で天に捧げた孝行息子ぶりには頭が下がる。

次走が脚質的にも合いそうな有馬記念(G1)ならば、武史はお手馬エフフォーリアと被ることになるが、それだけで年内休養ということはないだろう。

また、23年前の菊花賞でセイウンスカイと横山典弘が刻んだ「速-緩-速」のラップをなぞるように逃げ切った武史も見事。ガッツポーズも父の2冠と同じ。

セイウンスカイの菊花賞制覇から54日後の12月22日に武史は産声をあげており、会心の勝利の記憶はDNAに刻まれていたのだろう。

そして、意図的かどうかは不明だが、目立たないところでの兄・和生から弟・武史への番手サポートも絶妙で、つくづく競馬は血の繋がりが大事なのだなと再認識させられた菊花賞だった。

 

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