【重賞レース回顧】第82回皐月賞(GI)ジオグリフ

重賞レース回顧

写真:JRA

4/17㈰、中山競馬場で行われた第82回皐月賞(G1)は、先行集団の直後5~6番手から進んだ福永祐一騎乗の5番人気ジオグリフ(牡3、美浦・木村哲也厩舎)が1:59.7(良)で優勝。

1馬身差の2着にイクイノックスを従え、木村哲也厩舎の1-2フィニッシュで決着。1番人気ドウデュースはスタート直後に揉まれ位置取りを悪くしたのが最後まで響き、直線猛追したもののダノンベルーガを交わして3着に浮上するのが精一杯だった。

 

皐月賞

戦前

馬場考察のご愛読者様方はこの状態を事前に知れているので①ダノンベルーガと②アスクビクターモアは大きなハンデを背負っていることも同時に知っている。キラーアビリティは状態そのものに大きな不備がある上に④では出番はない。

なお皐月賞前までに芝2000~2200m(スタンド前スタート)が土日で計4鞍行われたがそこまでの①~④番の成績は(0.0.0.16/16)。この中にはかなりの上位人気馬達も含まれたが軒並み沈んだ。

枠順発表時点で他の有力馬より優位に立ち、且つ能力面でもトップクラスである⑫ドウデュースの軸はもはや余程の事がない限り不動。相手探しの一戦となる。

 

 

スタート

ほぼ揃った中、キラーアビリティ、ジャスティンパレスが僅かに遅れ、デシエルトは躓く。肚を括った田辺が極悪の最内馬場を押して先頭で1コーナーに入り、デシエルトも何とか2番手、ビーアストニッシドとボーンディスウェイが出たままそこに続いて先団を形成。それらを見る形でダノンベルーガ、ジオグリフ、イクイノックスが並んで追走。1番人気ドウデュースはオニャンコポンに遮られ後方に下がる。

 

道中

1000m通過は1:00.2。アスクビクターモアもやや強引に先手を取ったにしてはそれほど速くない。ここまでのラップを確認したところ12.6-11.0-11.6-12.212.8、続く2Fも12.3-12.3と息を入れまくっている完璧に近い逃げ。

この流れで先団のすぐ後ろに人気馬が集うと後手を踏まされ後方2番手のドウデュースは厳しい。

3コーナーからイクイノックス、ジオグリフが馬場の良いところを馬なりで上がっていくが、ダノンベルーガはジオグリフにやんわりと蓋をされている。恐らくこの時点で福永の中で敵はイクイノックスのみに絞られた事が容易に想像できる。

直線

絶妙過ぎる逃げを打った田辺がいよいよ外に持ち出すが、超悪枠を押して行ったダメージはやはり重く、ここで外からイクイノックスとジオグリフに交わされる。

ダノンベルーガは下がって来るボーンディスウェイが邪魔で外に出せず、川田は馬の能力に賭けてアスクの内から勝負に出る。既にドウデュースは直線勝負しか手がなくなっているので大外。

 

 

ゴール

先に抜け出した僚馬イクイノックスをジオグリフがしぶとく差し切り優勝。もつれた3着争いは内粘るダノンベルーガをドウデュースが何とか交わして3着を確保。

上位入線馬短評とダービーでの見解

1着 ⑭ジオグリフ

好枠から課題のスタートも決め、何一つ文句の付けどころのない福永の完璧騎乗により悠々とクラシック1冠目を奪取。新種牡馬ドレフォンは初めてのG1制覇を、そして木村哲也調教師は初クラシックをここで決めた。

ノド鳴りのある馬にとって、週中から空模様が悪く、当日も曇りで症状が軽減される湿り気のある気候もプラスに働いたかも知れない。

枠と展開利と気候を味方に付けた「運の強い馬」なら次のダービーでも当然有力視せねばならないだろう。

父ドレフォンはスプリンターなので距離が不安視されるが、馬場がいいとはいえ今日は常に外々を回る競馬であったことからスタミナ不安は杞憂に終わる可能性が高い。

また、福永は2018年ワグネリアンで騎手としての資質が覚醒。ここ4年でダービーを3勝しているのも心強い。

2着⑱イクイノックス

今年初戦組ではキラーアビリティ同様人気を集めたが、5割も出来てないキラーアビリティと違い9割近く仕上がっている。その甲斐あって前走が東京スポーツ杯2歳S(G2)という異色すぎるローテーションもお構いなく最後まで奮闘した。

能力が高い事は周知の事実だが、使うと疲労が抜けきらないという欠点がダービーでどう出るか?そこを踏まえて陣営は次をMAXにする状態で送り込んだものと思われる。

能力面よりもむしろ気になるのは以下に綴る血統的なダービーとの相性の悪さではなかろうか?

  • 父キタサンブラック 14着
  • 父父ブラックタイド 皐月賞16着後故障で出走断念
  • 母父キングヘイロー 14着
3着 ⑫ドウデュース

余程の事がない限り軸不動。そして余程に近い程の事が起きたが完走したため能力の高さだけで3着。これにもし若手や中堅騎手が乗っていれば非難轟々で次走は乗り替わり必至だったと思われる。

オニャンコポンにカットされる不運があったとはいえ、そうならないようにするのが名手の務め。絶好枠を10秒で台無しにした事は言い逃れ出来る事ではなく、最後の追い上げもダイナミックさに欠けた。先週のウォーターナビレラとスターズオンアースの決着では個人的にコレに救われたが、競馬界の第一人者の衰えは見ていて辛くもある。

因みに私は決してアンチ武豊ではなく、むしろ好きだ。しかし、私とは比較にならない程、自身を敬愛なさっているキーファーズの松島代表と共に秋の凱旋門賞制覇を目指すのならばダービーでの失態は許されない。

ややもすれば3冠を目指さなくて済んだのは幸運かも知れず、秋にはダービー馬として胸を張って海を渡って欲しい。その力は十分にある。

4着 ①ダノンベルーガ

最低最悪とも言える皐月賞の白帽黒帽馬場考察:4/16~17)を引いて終始インを通らされ、最後まで3着争いを繰り広げたのは能力の証以外の何物でもない。皐月賞馬となったジオグリフに完勝した東京に戻れば逆転は十分可能な力量を秘める。

過去10年で皐月賞①~④番枠から3着以内に入った6頭はダービーでも全て3着以内に好走しているのでデータ的には出来れば3着が欲しかったが、ワンアンドオンリーにスワーヴリチャード、ワグネリアンのようにゴミ枠をこなせず着外に敗れた面々からの巻き返しもある。

5着 ②アスクビクターモア

悪枠から悪路を先行したのが最後に響いた形になったが力は示した。とはいえ田辺も道中は絶妙のラップを刻んでおり、最後の垂れ方を見ても掲示板の他4頭とは力量差があったと考えざるを得ない。

現状ダービーでは強力な先行馬が不在なため展開利は見込めるが、運のある馬が勝つと言われるダービーで今回のような最低枠を引く運の無さは懸念材料。そしてこれはダノンベルーガにも言える。

6着以下気になった馬

6着 ⑪オニャンコポン

今回はドウデュースを沈めた元凶となり、華麗な名前で向上したイメージは少し下がったが能力の片鱗は示した。冗談抜きですぐにヨーロッパ遠征し、愛ダービー馬となって秋にドウデュースを迎え撃ってほしいくらいだ。

13着 ④キラーアビリティ

「スタートが全て」と武史は後述したがそれはあり得ない。デキ5分に加え悪枠では勝負にならない事など最初から分かっていたはずで、進路の取り方も終始ド適当。完全にダービーへ向けての調教替わりの一戦だった。

おしまい。

関連記事:第82回皐月賞(G1)出走馬全頭診断

 

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